活動のサイクル
近頃数字に興味を持ちはじめて、書きたいと思う気持ちが出てた園児がいました。
書いてみるけど、思うようにいかない様子でした。そこで、砂文字盤に誘いました。砂で数字を形どっている部分を、指でなぞる教具です。
「やってみる!」と笑顔で始めました。初めは、1度書いて終わろうとしましたが、もう1回と促しを数回するうちに、次第に自分で「もう1回」と声を出して何度もするようになりました。そして、紙に書いてみました。すると先程まで苦戦して書いていた数字が、自分の思っていた形に書くことができました。とても嬉しそうでした。時々失敗もありますが、できたことへの喜びの方が大きいようでした。
納得いけば、次の数字へと進みました。
同じことを繰り返し、その日は1から7まで終えた時に、朝の会の時間となりました。
「今日は、これで終わる。」
「疲れたー。」
「でも、楽しかったー。」
と、素敵な笑顔であったことは、言うまでもありません。
自由に選ぶ→繰り返す→集中する→達成感をもって終わる、 という四つのステップをモンテッソーリ教育では「活動のサイクル」と呼びます。
この「活動のサイクル」を経ると、子どもの心は安定します。子どもの内面から生きる喜びや自尊感情が育つと言われています。
集中にこだわると、達成感より疲労感を感じることになるかもしれません。
「活動のサイクル」は、子どもたちのその時の気持ちを正直に、表してくれるのではないでしょうか。
自分で決めること
登園する前から「今日はこれをしよう!」と決めてくる子もいれば、
「なにをしようかな〜」とお部屋の中をぐるっとしながら考える子もいます。
自分でやりたいことを見つけて取り組むサイクルを大切にしていますが、子ども達が自分で活動を選べずにいる時は助け舟を出すこともあります。
この子にはこの分野ならコレ!とそれぞれにこちらが紹介したい活動はありますが、ここでも大切なのは本人の意思を尊重すること。
こんなのはどうかな?
これか、これならどっちがいい?
聞きながら、答えが出るまで、迷う時間もゆっくり待ちます。
子どもたちは遠慮なく自分と向き合ってから
んー…どうしよっかなぁ、、
それはしない!
コレにする!
と自分の意志で決め切ります。
やらされる活動には何の意味もありません。
子ども達は優しいので、大人がやって欲しいと願っている気持ちを敏感に読み取ります。
だからこそ、あなたの選択に任せるよ!とアピールするくらい本人の言葉を目を見て聞きます。
活動の自己選択は自分が尊重される経験にも繋がり、この経験の積み重ねが子ども達の自信や責任感にも繋がっていくものだと考えます。
修復力
「スポーツカーの折り方調べて」
「ガチャガチャの作り方調べて」
と、子ども達は作りたいものの作り方がわからない時、ネット検索を一つの選択肢として持っています。
検索結果の中から参考までに選ぶのですが、小さい子は迷わず最もクオリティの高いもの(もちろん一番難しい)を作ろうとします。
それがだんだん大きくなると、自分に出来そうな中での最大限クオリティの高いもの、くらいの妥協を自分で出来るようになります。
己の能力をよく理解しているからこそ、そうした選択も出来るようになるのでしょう。
自分のことを客観的に見る力は、ネガティブな感情からの修復力にも繋がっているそうです。
子ども達の選択ひとつからも様々な成長が見えるものですね。
朝の会
子どもたちは集団の一員として過ごす中で、自然と"いま自分がどう振る舞うべきか"ということを考えて行動できるようになります。
毎日、朝の会では絵本の読み聞かせをしています。
絵本には(◯歳〜向け)と対象年齢の目安があり、小さいお友達にとっては少し難しい本の日もあります。
もちろん難しすぎると途中で飽きてしまうのですが、そんな中でもあっちこっちに動いたり声を出したりすることなく、全員がジーッと最後まで座って参加出来るようになってきました。
朝の会は座って静かに参加する、というルールを周りを見て理解し、そのルールを守る為の自己コントロール力がついたのです。
朝の会は1日の中で短い時間ですが、一人一人の自立があってこその大切な集団の時間です。
個の育ちがあるからこそ集団の成長が見え、集団があるからこその個の成長もあるのだと、改めて子ども達に教わった日でした。
間違い
私たちモンテッソーリ教師は、子どもたちが間違っていても "訂正しません" 。
子どもは否定されると心を閉ざしてしまうからです。
しかし、間違っていることを間違ったまま放っておく訳でもありません。
その場で「違うよ、こうだよ」と言う代わりにまずは、間違っているなぁ…という事実を頭の片隅に留めておきます。
そして、日にちや時間を変えて全く関係のないタイミングで伝え直すのです。
例えば数字をスラスラと書ける子がいて、
でもその書き順やバランスが間違っているとき。
楽しそうに書いている時は、間違っていても静かに見守ります。
そして次の日「一緒に数字の書き順を紹介したいんだけど…やってみる?」などと誘い、改めて紹介し直します。
すると子どもは否定されることもなく、
「ああ。こうやって書くんだった」
と、自分の中で間違っていた部分と照らし合わせながら自己訂正をしていきます。
子どもを否定することなく
「教えながら教えなさい」
とマリア・モンテッソーリは言いました。
子どものできた!を奪わずに、正しいことを伝えられる方法は、子どもを尊重する上でもとても大切にしたいものです。
その他の記事...